人工衛星の軌道計算を行う上で最初に気になるポイントとして、そもそもどうやって人工衛星の軌道が決まるのかというポイントがあります。
今回は人工衛星の軌道がどのように決まるのか紹介していきます。
人工衛星とは?
人工衛星とは簡単にいうと、地球を回る人工の天体です。
目的によって,科学衛星,実用衛星,軍事衛星などの区別があります。
人類で最初の人工衛星は1957年10月4日,ソビエト連邦が打ち上げた人工衛星です。
史上最初の人工衛星『スプートニク』1号の打ち上げに成功,1958年1月にはアメリカ合衆国も『エクスプローラ』1号を軌道に乗せました。
それ以来大量の人口衛星が打ち上げられ地球のまわりを回っています。
ソ連とアメリカに続いて,フランス,中国,ヨーロッパ宇宙機関 ESAなどが衛星の自力打ち上げを行なっています。
日本は 1970年に初めて『おおすみ』の打ち上げに成功,その後、静止気象衛星『ひまわり』など多数の衛星を打ち上げています。
人工衛星の軌道はどのように決まるのか?
そもそも人工衛星の軌道はどのように決まるのでしょうか。
人工衛星(人口物体)は地球の周りに数万個回っていますが果たして、どのようにそれぞれの軌道が決まるのか説明していきます。
人工衛星の軌道を決める要素
人工衛星の軌道は速度、高度、軌道経路で決まります。
衛星軌道の高度と軌道経路については以下の通り。
静止軌道の高度は遠心力と引力の釣り合うところで決まる。
静止衛星は、赤道上高度36000km(=地球3個分)極軌道衛星は、高度900km前後が多い。
(北極と南極を結ぶ周回)準天頂衛星は、高度32000〜40000km(みちびきの場合。8の字軌道)
*1国際宇宙ステーションISSは、高度400km。
いずれも衛星の軌道はケプラーの法則で決まる。運用中の静止衛星はかなりの密度になり、平均すると260km(東京〜浜松間)に一つの衛星が飛んでいる計算。
ケプラーの法則
ケプラーの第一法則は「楕円軌道の法則」です。
地球をはじめ惑星は太陽の周りを公転している訳ですが、その軌道は楕円であるというものです。楕円といってもぺちゃんこにつぶれた楕円ではありません。
我々が円を書こうとコンパスを持ったとしましょう。
一周してきたらもとの場所から少しずれてしまって、そのずれをごまかすためズルをしてつなげてしまったときのような程度の楕円です。
この僅かなゆがみ具合を惑星の軌道に見つけたのですから驚きです。
しかもそのもとになる数値は現代のような精密な観測機器があるわけでもない時代に、人間が眼で見て取った天文データ。
よほどの強運の持ち主だったのですね。
太陽系の惑星は内側から水星、金星、地球、火星・・・と続きます。どれも楕円軌道を描いて公転していますが、そのゆがみ具合には差があります。
円は1つの中心から等距離な点の集合ですが、楕円には2つ中心があります。
この2つの中心(「焦点」という)が離れていればいるほど楕円はゆがみます。
楕円の特徴を表す焦点の離れ度合いを「離心率」といいます。
離心率はその値が多きい程ゆがんだ楕円であり、離心率が0ならばまるっきりの円です。
ケプラーが目をつけた「火星」はたまたま離心率が大きな惑星だったのです!
楕円軌道を描く惑星と太陽の位置関係はどうでしょう?
楕円には焦点が2つあるといいましたが、太陽はこのうちの1つの場所にあります。つまりケプラーの第一法則をまとめると以下のようになります。
■ケプラーの第一法則
「楕円軌道の法則」 太陽系の惑星の公転軌道は、太陽を1つの焦点とする楕円軌道である。 続いて第二法則ですが、これは「面積速度一定の法則」といって、惑星が太陽に近いところを通過するときはその速度が大きく、遠いところの場合には小さいというものです。
2つある焦点の一方である太陽と惑星の軌道が最も近づく地点を「近日点」といいます。地球にも火星にも近日点はあります。近日点付近を通過するときが最も速いのです。
早いということは一定時間内に移動する距離は長く、その分太陽までの距離は短い。
つまり楕円の円周部分が長く半径部分が短い。
この円周部分と半径によって囲まれたやや間延びした扇形の面積を考えたとき、これはいつでも一定であるというのがケプラーの第二法則なのです。
太陽から最も遠い「遠日点」付近では円周部分が短く半径部分が長い扇形になります。公転速度を面積に置き換えて説明しているところが何ともニクイですね。
■ケプラーの第二法則
「面積速度一定の法則」 太陽から惑星に引いた動径は、等しい時間に等しい面積を描くように動く。 それにしてもこの法則をよくよく考えたとき、これは単に惑星が好き勝手に動いている訳ではなく、何らかの太陽からの影響を受けていることが感じ取れます。
惑星は太陽から引っ張られているような・・・ケプラーの次の世代、ニュートンはこの引っ張られている力を「万有引力」として定式化することになります。 太陽からの万有引力は距離が離れるほど弱くなります。弱くなれば一周に要する時間も長くなります。
太陽と惑星の距離(楕円なので「平均距離」とする)と1公転にかかる時間(「公転周期」という)には比例関係が認められます。ただ単純な比例ではなく、以下のようになります。
■ケプラーの第三法則
惑星の平均距離(a)の3乗は、公転周期(p)の2乗に比例する。 aの3乗/pの2乗=一定 ※aの単位に「AU」を、pの単位に「年」を用いればこの一定値は1となる。
最後に
人工衛星の軌道経路やどうやって決まるのかを解説しました。
最後までご覧頂きありがとうございます。